Playback 日比谷音楽祭2022

- Report -

KADAN/ONGAKUDO/
KOTONOHA/HIROBA and 配信限定
6月5日(日)レポート

文・森正志(THE FOREST/日比谷音楽祭制作委員長)
日比谷音楽祭事務局

KADANステージ(日比谷公園・第二花壇)

読み聞かせライブ《聞かせ屋。けいたろう》

最終日のKADANステージは、土曜日に続き2度目の登場になる《聞かせ屋。けいたろう》から。
今日も芝生の上にはたくさんのファミリーがリラックスして座っているなか、聞かせや。けいたろうを真ん中に、左にバイオリンの田島朗子、右にはアコースティックギターの河野文彦と、3人が観客と同じように絵本の見える距離感に立って絵本の読み聞かせライブがはじまった。

本日の2冊目の絵本は「どうぶつたいじゅうそくてい」。
田島朗子のバイオリンと河野文彦のアコースティックギターの音が、次々と登場する動物たちの体重測定を楽しく、テンポよく進めていく。
ゾウが登場すると「どう測るの?」「いったい何キロあるの?」そんなドキドキを音で代弁しながら
絵本の世界をよりドラマチックに、場面をとても豊かにしながら、子供たちとその親たちもその世界のなかに引き込んでいく。

見て楽しむ、聞いて楽しむ、そして隣にいる家族とのスキンシップやコミュニケーションも楽しむ、そんな仕掛けいっぱいの絵本の読み聞かせライブであった。

(森正志)

日本の音を感じよう
~お箏、琵琶体験ワークショップ~ 
龍声~Ryusei~

日比谷音楽祭2019では日比谷図書文化館内のセミナールームで開催された和楽器の演奏体験ワークショップを、今年はKADANステージの上に上がりステージに並んだお箏を弾く体験ができる、オープンエアーの芝生の上で琵琶を弾くことができる、というかたちで開催。さらに参加しやすく、開かれたものになった。

手に持ってみると、琵琶のバチは思っていたよりも大きかったり、その形や持ち方も想像よりも複雑だったり。
お箏は弦が固かったり、意外と端っこに座ることがわかったり。
そして実際に音が出はじめると、小さな子供も大人も、内に秘められた好奇心と集中力とが開いていくような「真剣な顔」に。そして一心不乱に何度も鳴らしてみる。
少し慣れてきて、体験が終わる頃に笑顔が出てくる。

代わる代わるたくさんの人たちがそんな忘れられない体験をしていた。

(森正志)

声を出さなくてもハモれる⁉
「ボディーパーカッションでハモニケーション♪」ワークショップ 杉田篤史(INSPi / hamo-labo)

アカペラグループINSPiのリーダーである杉田篤史によるワークショップ。
通常は企業や団体など、さまざまな人たちに対してコーラスのハーモニーをベースにしたワークショップの活動などを行っているが、 今回はまだコロナが完全に明けていない状況下での開催になったため、「声を出さなくてもできること」をテーマにワークショップの内容が準備された。
まずは、デモンストレーション演奏のように心地よいアコースティックギターとボーカル、クラップ、ボイスパーカッションによる「風になりたい」が披露され、スタート。さっそく曲中で簡単なクラップによるコールアンドレスポンスがはじまる。
続いて、体を叩いてクラップを混ぜてみる。いろんなパターンについてこれるかな?
今度はフラメンコギター、そして再び、ボーカルに戻り、その頃にはみんなのクラップが一緒に演奏をつくっている。
これからこの時間にみんなでやりたいことを自然なやり方で伝えながら、ボディーパーカッションワークショップが幕を開けた。

みんなで輪になって、時計回りに順番に拍手を一回ずつ繋いでいったり、家族や隣の人とで向かい合って縦の拍手と横の拍手で呼吸を合わせたり、今度は足踏みでタイミングを合わせてみたり。
このワークショップでわかるのは、演奏というものは他の人のリズムを予想したり、合わせたり、人とのコミュニケーションと調和であること。
それをわかりやすく体感して実感することで、演奏することの楽しさが何倍にも増していく。

最後はここまでの体験で養ったリズム感を使って、3つのパートでリズムの役割を分担し、再び、「風になりたい」を合奏。
練習後はパートごとに固まるのではなく、立ち位置をシャッフルして本番。
演奏後にみんなの感想を確かめながら明かされたのは、シャッフルされた状態の方がクラップをすることが難しくなる、でも、その方が演奏を楽しく感じる、さらには、シャッフルされている状態の方が失敗してもお互いを許しあえる度合いが高いらしい、という研究結果が実はあること。
心地よく手に残るクラップの感触と、みんなで大きな演奏ができたことの喜びでKADANステージが満たされた。

(森正志)

チケットを取ってライブに行こう!
~プレイガイド3社の中の人と語る、チケットのあれこれ~
MC:大谷ノブ彦(DJダイノジ)、たなしん

「音楽の新しい循環」をテーマに音楽にまつわるさまざまな仕事やスタッフを紹介してきた日比谷音楽祭。
今回はこのコロナ禍で、復活してきたエンタテインメントをもっと応援したい、チケットを買ってライブやフェスに足を運んで欲しい、という想いから、プレイガイドで働く皆さんを主人公に、生トークセッションを行った。
出演は日比谷音楽祭のYAONチケットのオペレーションサポートとして、協賛社としても協力頂いている3社から、写真左からイープラス ( 山本 聡司 / 寺田 香奈江 ) / チケットぴあ ( 坂本 萌 ) / ローチケ ( 立石 凌 ) の4名。
MCは共に出演者としてステージに立ってきたDJダイノジの大谷ノブ彦 と、グッドモーニングアメリカのベーシストであり、日比谷音楽祭公式YouTubeチャンネル(HYC)プロデューサーのたなしん。

普段は競合としてしのぎを削っている3社ではあるが、この日だけは日比谷音楽祭ということで、ピースに、エンタテインメントをみんなで盛り上げていく、という空気感をつくりつつも、ときに各社アピールがあったり、きわどい質問が出たりと、二人のMCが盛り上げていく。

「昔、ぴあのお店があって、そこに並んで買いましたよね?」
「公衆電話だと繋がりやすいって都市伝説があって。10円たくさん準備して。」
「うちの親、先日、はじめてスマホで会員登録しました。」等々、
トークの内容はチケット購入にまつわる歴史をなぞりながら世代間ギャップを確認したり、転売を無くすために様々な努力がなされていることを知ったりと、改めてプレイガイドの仕事の内容が社会の変化にあわせてスピーディーに変化を遂げてきたことや、その範疇の大きさがわかる。
そしてこの世界に入ったきっかけを聞くと、三者三様の思いや出会いがあったこともまた興味深い。

その後は、チケット価格のあり方や手数料における海外と日本の違いに触れ、さらに盛り上がってきたところで、気づけば予定時間が過ぎ、まだまだ話足りない名残惜しさのなかプレイガイドトークセッションが終了。

今回のような企画を通して、音楽に関わるスタッフの人柄や様々な想い、努力が少しづつでも印象に残ったり、伝わっていることが、日比谷音楽祭の目指す「音楽の新しい循環」について、みんなが具体的にイメージできるようになったり、考えるきっかけになると信じています。
ぜひ、プレイガイドでチケットを買い、コンサートやフェスに足を運び、音楽を応援してください。よろしくお願い致します。

(森正志)

たなしんと音楽を体験しながらつくる「日比谷音楽祭2022スペシャルムービー」

まずは、たなしんが首からカメラを下げ、マイクを持って登場。
日比谷音楽祭公式YouTubeチャンネル(HYC)のプロデューサーとしてコロナ禍の直前2020年1月から日比谷音楽祭に関わるたなしんが、自らの目線で見てきた日比谷音楽祭の思い出、日比谷音楽祭への想いを熱く語った。
日比谷音楽祭は「理想を形にするフェス」「チャレンジを諦めないフェス」そう説明した後、昨年無観客での演奏になった「The たなしん・パーク・オーケストラ2021」のメンバーとの演奏をお客さんの前で披露し、演奏に参加しながら新しいチャレンジする姿、今日しかできない体験を、たなしん自身が撮影してきた日比谷音楽祭2022の様々なシーンと共に動画にまとめたい、という。

呼び込まれた3人のメンバーと演奏したのは「サヨナラCOLOR」。
音楽を共有する喜びを分かち合った。

たなしんが撮影した日比谷音楽祭2022の動画は、後日配信予定。

(森正志)

ONGAKUDOステージ
(日比谷公園・小音楽堂)

角野隼斗

開催数日前、設営中の日比谷公園で「当日、角野さんのピアノが聞けるのはどこのステージですか?」とスタッフが聞かれるほどの人気ぶりの角野隼斗。
この日のONGAKUDOステージのトップバッターとして、颯爽と登場してピアノに座る。
はじまったのは「7つのレベルのきらきら星変奏曲」。
優しさ、 キラキラ、 ユーモア、温かさ、軽快な楽しさ、夢の世界、華やかさ、クライマックス、そしてテクニカルなフィナーレ。
いきなり軽やかに、次々とシーンの展開を魅せ、オープニングから一本の映画を見せられたかのよう。

弾き終わって、立ってマイクを握って挨拶と終えると、次は自身の曲「ショパン:胎動」。
優しさを携えた大きなうねりが力強く流れ、キラキラとした光を纏っていく。
続いてこちらも自身の曲「Tinkerland(ティンカーランド)」。
右手だけ後ろに伸ばしてトイピアノにちょっかいをだすように弾いて、口にはピアノの上に置いたピアニカから伸びた唄口を咥えながらの速弾き演奏。可愛らしくスピーディーなタッチで右手はピアニカ、左手はピアノ、今度は両手がピアノの戻ったと思ったら、また右手が後ろのトイピアノにちょっかいを出しながら、左手はピアノ演奏、と実に愉快な演奏姿で魅せる。
最後は強いタッチでピアノの引き倒して曲が終わる、と思ったらまたちょっとトイピアノが参加してフィニッシュ。
とっても楽しい。

「外で演奏するっていうのもいいものですね。」「ノリノリの曲なんで聴いてください!」そう言ってはじまったのは、Nikolai Kapustin(ニコライ・カプースチン)「8つの演奏会用エチュードOp.40」。
たった一人でバンドセッションを繰り広げるようにピアノを操って魅せる。
そして、George Gershwin(ジョージ・ガーシュウィン)「Swanee(スワニー)」をリズミカルに。
角野隼斗の爽やかさの中に無邪気さが潜む佇まいと、軽くウエーブのかかった髪が少年のようにも、大人っぽくも輝く。
最後の曲はショパン「英雄ポロネーズ」。
誰もが知る名曲が、そのフレーズが、背景の日比谷公園とグランドピアノと小音楽堂と、絶妙なバランスで角野隼斗と一体になっていくのを感じる。
あっという間。本当にあっという間に野外でグランドピアノの角野隼斗という貴重で贅沢な瞬間が終わってしまった。

(森正志)

伊那市ミドリナ委員会

伊那市ミドリナ委員会は長野県伊那市で官民一体となり、「森・人・美」をテーマに活動するプロジェクト。
今回はそこで行われている「森JOY」というイベントから「日比谷の森と伊那市の森をつなぐ音楽」として、「快の森~命の悦びが満ちる世界~」をテーマに、ピアニスト 平澤真希、バリトン歌手 髙橋正典、そして、伊那北高校合唱部がステージに立った。

オープニングはシューベルトの「アヴェマリア」。
ピアノ伴奏に髙橋正典が静かに力強く歌い上げる。
続いて、伊那北高校合唱部がステージに上がる。
14名の高校生たちの合唱が加わることで、多様なたくさんの生命力を感じられるような大きなハーモニーとなり、これが伊那市の森に響きわたったときの美しさを、この日比谷公園の自然のなかでも想像することができる。

最後はオリジナル曲「森のこえ」が披露された。
高校生たちの表情はより生き生きと輝きはじめ、 偶然なのか、この演奏につられるように日比谷公園のスズメたちの声も活発に聞こえはじめ、なにかが繋がったような、自然と呼応できたようなやわらかな感覚にONAGKUDOが包まれ、拍手のなか、ステージが終了した。

(森正志)

岡本 梨奈

2020年に服部 真二文化・スポーツ財団より「世界で活躍が期待される若き音楽家」として服部 真二音楽賞を受賞したフルート奏者の岡本 梨奈は2006年生まれの、現在東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校1年生。

緊張を感じさせない佇まいでステージに立つ。ひとたび岡本がフルートを口にすると、まるで喧騒が消えたかのように、会場は上品なフルートの音色で充たされていく。 1曲目は、Johann Joachim Quantz(ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ)作曲「Flute concerto 第一楽章」。管楽器による西洋音楽(MCによるとこの曲は古典派に分類されるらしい)は、120年前につくられた日本初の西洋式公園=日比谷公園の小音楽堂に実によく似合うということに改めて気がつく。石造りの小音楽堂、奥に見える日比谷公会堂の重厚感ある建物、噴水、樹々の緑や花々、鳥たちといったすべてに祝福をされているかのようだ。

MCでは初々しい表情で丁寧に挨拶をし、楽曲の背景を語った後「聴いてくださる方々にフルートという楽器の良さが伝わるように精一杯演奏したい」とGabriel.Faure(ガブリエル・フォーレ)「Fantaisie op79」、そして今年5月に琵琶湖国際フルートコンクールで優勝したというGeorge Hue(ジョルジュ・ユー)「Fantaisie」を続けて演奏した。 同じ「ファンタジー(幻想)」と題された2曲だが曲調は全く異なる。これは日比谷音楽祭の“どんな人でもコンサートを観に来ることができる”という趣旨を彼女なりに理解して、クラシック初心者でも興味を持つきっかけにもなるようにと考えての選曲ではないだろうか。

岡本は、2つの「ファンタジー」で、鮮やかに移り変わるハーモニーの美しさを、華やかなフルートの音色を、風に乗せて日比谷の空に心地よく響かせていった。

(日比谷音楽祭事務局)

紀平凱成

紀平凱成も2020年に服部真二賞を受賞したひとり。
全身白い衣装でステージに現れ、中央で深々とお辞儀をする。
客席に両手を振り、ピアノの前に座るとゆっくりと両手を上げ、天を仰いだかと思うと、唐突に曲をスタートする。
Nikolai Kapustin(ニコライ・カプースチン)の「8つのコンサート用エチュード-5 “冗談”」だ。
複雑な曲をまるでゲームでも楽しむかのように弾く。
続いて同じくNikolai Kapustin(ニコライ・カプースチン)の「Toccatina」。
弾きながら紀平も跳ねる、跳ねる。四方八方から音が飛んでくるようだ。

2曲を披露した後、ステージ袖に一度ハケると、紀平自らの声で録音されたMCが流れる。
丁寧に自己紹介をした後、大好きだというカプースチンの魅力を”たくさんの音符がキラキラ輝いている”と語りながら、カプースチンみたいな曲を作りたいと自身が中学一年生の頃に作曲した、リズミカルなテンポが楽しい「Tennis Boy Rag」へと繋げる。

再びMCを挟んで、コロナ禍でつくったという「No Tears Forever」で壮大なスケールを感じさせ、次に「平和への祈りを込めて」とJohn Lennon(ジョン・レノン) の「Imagine」を演奏。「みなさんもよく知っている曲」と言うが、紀平によってアレンジされた「Imagine」は、よく知っているそれよりもずっとキラキラとしていてロマンチックだった。

「みなさんの心に響く曲をずっと作っていきたい」とのMCから、再びオリジナル曲「Fields」。「爽やかな風を感じながら自然の中を思いっきり駆け巡ったり、草原に寝転んで深呼吸したり」といった気持ちを表現したというまさに日比谷公園という場所にぴったりな一曲を演奏した。
最後は、曲中何度も立ち上がりながら力強く演奏した「We will Rock you」。そして「We are the Champions」という独創的アレンジによるQUEENのメドレーでステージは幕を閉じた。
豊かな感受性と自由な感性、彼の音楽に対する意志を存分に感じさせる紀平凱成のステージは、「もっと音楽は自由であっていい」と語りかけているようでもあった。

(日比谷音楽祭事務局)

指揮者・平井秀明プロデュース「みんなで楽しむクラシック!」
『合唱とオペラの祭典』ファミリーコンサート~童謡唱歌からオペラまで~

指揮者・平井秀明の企画が今年もONGAKUDOステージで披露された。
日比谷音楽祭において、平井秀明は今までも情熱、本質、試みのバランスを大切に保ちながら、
クラシックを開いていくこと、日本の伝統文化を重んじることを、みんなで音楽を楽しむこと、を丁寧に企画、実践してきた。
日比谷音楽祭2019では、 世代を超えて参加できる「かぐや姫」を題材にしたオペラワークショップにトライし、この野外ステージで披露したことはとても印象的であった。

今年は平井秀明がプロデューサーを務める西新宿のガルバホールを拠点に活躍するGarba Artistsのメンバー(今回、歌手、器楽奏者、ダンサーが12名出演)により、お馴染みの「童謡唱歌メドレー」から、名作オペラハイライト(歌劇『カルメン』ほか)まで、ライヴ公演ならではの醍醐味を、【親子孫三世代】に届ける、という内容になった。

今回は新型コロナウイルスの影響にも配慮し、少数精鋭というかたちとなったが、平井秀明の指揮に向かい合うかたちで華やかなドレス姿のメンバーが並び、誰もが知る名曲が表情豊かに、ユーモアも交えながら次々と歌われていく。
後列にはグランドピアノ、バイオリン、オーボエ、木琴などのなかに交じり、先ほどステージに立ったフルート奏者の岡本 梨奈も飛び入り参加しているのが見える。

続いて披露されたのは、イギリスのボーイズソプラノによるユニットLIBERAのために、日比谷音楽祭の実行委員長である亀田誠治が作曲・プロデュース、平井が合唱編曲した「明日へ〜for the future」。

後半はオペラのコーナーへ。
厳かな集中力高まる独唱や、ダンスも入り動きのあるものまで、実にバラエティー豊かにオペラの世界でこのONAGAKUDOステージを彩ってみせた。
全ての演目が終わると、次回こそ一緒に声を出して楽しむことができるよう、願いを託して、大きな拍手の中、今年のONGAKUDO最後のステージが終了した。

(森正志)

KOTONOHAステージ(東京ミッドタウン日比谷・パークビューガーデン)

佐藤ひらり

少し風のある東京ミッドタウン日比谷6FパークビューガーデンのKOTONOHAステージ。
佐藤ひらりがキーボードの前に座り、いきなり歌い始めたのは映画「The Greatest Showman(グレイテスト・ショーマン)」の「This Is Me」。
情熱的なスタートとなった。
MCになると、はつらつと、そして積極的に来場者とコミュニケーションをとっていく。
続いて「Jupiter」。歌詞を強い意思で伝えていくその歌声を先行させ、自身で弾くピアノはそれに
ついて行かせるような演奏がとても印象的。
歌い終えると、MCでは風で飛びそうな帽子をネタにひと笑いつくりながら饒舌なMCで日比谷音楽祭が続くようにとクラウドファンディングの呼びかけまでをしてくれる優しさと余裕が感じられる。

その後に披露されたのは年号が変わるときにつくったという「令和」。
今までとはまた違う大人びた声色で歌い上げ、未来へのメッセージを伝えていく。
ユーモアあふれるMCから披露されたのは「ほめられてのびる子行進曲」。
そして最後には「アメイジング・グレイス」をしっとりと聞かせ、パラリンピック閉会式でも話題となった「君が代」の独唱で閉める。

この数年で数多くの大舞台を経験してきた佐藤ひらりの自由自在で確かな力がしっかりと示されたステージであった。

(森正志)

朝倉さや

キーボードのイントロにのって登場した朝倉さやは山形出身のアーティスト。
1曲目はスピッツの「ロビンソン」。といってもすこし様子がおかしい。どうやら普通のロビンソンではない。
なんと山形弁で歌っているのだ。「風さのるべ~」と歌い終わると笑顔で自己紹介。

続いては彼女の曲「新・東京」。空が近く感じる高い場合にあるステージにぴったりの、遠くに届くような伸びのある声で来場者の心をつかむ。
その後は曲前にレクチャーされた来場者による簡単な振り付けと、民謡とスキャットとサングラス姿が形容しがたいジャンルレスで楽しい音楽空間をつくる。

一転して、再び、皆が聞き入るような伸びのある声で歌われたのは「島唄」のカバー。
最後には「また、お会いしましょう。ありがとさまでした!」と明るい挨拶で終えると「ライフソング-Life Song-」で優しさを染み渡らせて、懐かしさと温かみあふれる朝倉さやのステージは終了した。

(森正志)

関取花

公開リハーサルを終えて、再び、ひとりアコースティックギターを抱えてステージに上がり、サウンドチェックを終えると、まずは慣れた感じで観客とたわいもない会話をする。
ハーモニカのように口元にセットされているのは緑色のカズー。アフリカ生まれの膜鳴楽器の一種で、「ブーブ」と動物が鼻歌をするようなユーモアのある音がする。
天気のことを少し心配しながら手拍子のなかで歌いはじめたのは「私の葬式」。
間奏ではさっそくカズーも使われ、楽しげな空気を作る。

MCでは日比谷の街と普段の自分との関わりについて話し、先ほど日比谷シャンテで観てきた「宝塚展」の話をしようとするも、観客の反応をみて、深追いせずに、次の曲「もしも僕に」へ。
友達との会話のような気負いのないMCとその先の音楽のなかで紡がれるストーリーは同じような温度で自然につながり、弾き語りとして一連の流れになっていて、時間が過ぎるのを忘れてしまう。

最後は『また会いましたね』というニューアルバムの話のなかで、「私、ライブが半年間ない、ということが耐えられなかったんですよ」という話から、日比谷公園の自然に触れて、「青葉の頃」。
「ひとりで伝えるからこそ伝わる。そういうこともある。」そう教えてくれるようなライブだった。

(森正志)

HIROBAステージ(東京ミッドタウン日比谷・日比谷ステップ広場)

花耶

南アルプス生まれのホーリーボイスと呼ばれ、注目をされているアーティスト、 花耶。
少し緊張した面持ちでステージに登場し、座ると、ライブがスタート。
最初の曲は 「上を向く花」 。イントロに続いて聞こえてきたのは、神聖さを含み、清涼感ある澄んだ声。
続いてMCでは、緊張しながらも日比谷音楽祭2022に出演することへの特別な想いを語った。
高校生のときに第一回の日比谷音楽祭2019に参加し、とても感動していつか出たいと思い続けて、夢が叶ったのだという。

たどたどしさと初々しさのあるMCで見守る来場者たちを笑顔にしながら曲を繋いでいき、丁寧に歌を届けていく。
「やっと緊張がほぐれてきたら最後の曲です。(笑)」そう言って歌った「白馬の王子と薔薇色の私」のあとは再び、ステージに立てたことの嬉しさを伝え、ステージを後にした。

ふわふわしたMCとは裏腹に、歌では声色と共に歌詞をきちんと置いていく、そういう印象を残した。

(森正志)

GAKU-MC

HIROBAステージに、GAKU-MCが登場。
代表曲の一つ、「昨日のNo,明日のYes」で軽快にライブがスタート。
GAKU-MCのギターボーカル、ドラムパーカッション、ベースの3名編成。
会場は「2階席~!」と呼んだ階段上まで満員御礼。

序盤に立教大学手話サークル 「Hand Shape」を紹介し、「手話うた」と共に披露されたのは「ナンダカンダ」。
⽿が不⾃由な⽅もそうでない⽅にとっても、「⼿話うた」の演出があることにより、歌詞が単に可視化されるだけはなく、曲の雰囲気やリズム、メロディー、抑揚といった多くの要素が表現され、音楽がエンタテインメントであることを教えてくれる。
「ナンダカンダ」 は藤井隆によるヒット曲であり、ダンサーを率いて踊るイメージが強いかもしれないが、
実はこの曲の作詞はGAKU-MCであり、今日はダンサーではなく、学生たち「Hand Shape」との共演で、
レゲエ調のスローテンポなナンバーとしてその歌詞がたっぷりの間をもって心に届く。
配信上では歌詞テロップが表示され、元々の歌詞と、手話に置き換えた意味を表す「手話歌詞」とをダブルで表示し、当時若者だった人たちにとっても、今の若者たちにとっても、その歌詞が普遍的であることを改めて示した。

次の曲は「もしもラッパーじゃなかったなら」。この曲はGAKU-MCのこれまでのキャリアをつくってきた楽曲が散りばめられながらも茶目っ気溢れる特別な曲。
ソロ活動時の曲はもちろん、EAST END×YURI 「DA.YO.NE」からウカスカジーの「勝利の笑みを 君と」までが組み込まれて演奏される。
お決まりの「拍手が鳴りやみません!!」で拍手を煽ったりしながら会場を笑顔に包んでライブは後半へ。

最後にGAKU-MCが伝えたのは、再びお客さんの前に立つことで得られた、初心を思い出すことへの感謝。
「家にいてオンライン会議、家にいてデリバリーフード、そして、家で配信ライブ。でもやっぱりこっちがいいよね。一緒がいいよね。」と。
行ったり来たりのコロナ禍での状況のこと、誰も望んでいないウクライナの現状などに触れ、 共に生きていくことの実感を想い、最後の演奏曲「サバイブ」へ。
目の前の人たちにしっかりと向かい合い、コミュニケートし、心を通わせ、アーティストがステージでできることをきちんとやり遂げるGAKU-MCの姿がそこにあった。

(森正志)

上妻宏光 Workshop Live

このプログラムは日本を代表する三味線奏者として、ジャンルを超え、国内外のアーティストとの共演を重ねてきた上妻宏光がライブ形式で、ゲストに迎えた三味線奏者と共に三味線の歴史や種類の違いなどを紹介するというもの。

東京ミッドタウン日比谷のHIROBAステージ(日比谷ステップ広場)で予定されていたこのWorkshop Liveは当日の雨予報と風の状況を踏まえ、楽器への影響を考慮し、急遽会場を日比谷図書文化館の大ホールに変更して開催されることとなった。
日比谷音楽祭は通常の野外フェスとは違い、多様なジャンルの音楽を紹介していることもあり、通常であれば野外での演奏を避けるようなジャンルや楽器奏者であっても可能な限り工夫をしながらも出演をしてもらっていることもあり、こうしたことが起こるのは日比谷音楽祭ならでは、なのかもしれない。

日比谷図書文化館の地下にある日比谷コンベンションホール(大ホール)は満員御礼。
広くないステージではあるが、座席はホール仕様になっているので観覧者からは非常に見やすい。
まずは上妻宏光がひとり登場し、椅子に座り、ものを言わず「津軽じょんがら節(新節)」を披露。
YAONの出演時とは違う羽織袴姿で太棹(ふとざお)三味線を座って演奏する姿は威厳がある。

演奏後、拍手の中、一礼し、立って簡単に挨拶をすると、昨日のYAONでの、やのとあがつまのこと、EXILE SHOKICHI、MIYAVIとの共演に触れつつ、今回のWorkshop Liveの趣旨を説明し、ゲスト奏者である中棹(ちゅうざお)三味線の清元斎寿、細棹(ほそざお)三味線の崎秀五郎を呼び込み紹介。 そのまま3人は、立ったままハンドマイクでトークがスタート。

歌舞伎などで共演をする三味線の種類もあるが、この日紹介された3種類の三味線は、基本的に共演することがないという。
まずは3つの三味線を並べてみせ、サイズを比べてみる。ジャンルによって使う三味線が変わるという。
そして、元々は中国、琉球(沖縄)、そして日本へと三味線という楽器が伝わってきた歴史についても簡単に触れる。
その後は演奏をし、音を聴かせ、その違い、歴史や言葉の由来、成り立ちに触れていく。
「都々逸(どどいつ)」の由来を話し、「ちょっとやってみましょうか、」というかたちでさっそく目の前で演奏をして見せてくれる。貴重な体験だ。

「江戸時代は三味線が弾けると異性に大変モテた、ということで我々は生まれる時代を間違えた。(笑)」
「清元というのは歴史がまだ200年ちょっとで、当時の三味線音楽のなかで最後にできている、今でいうとJ-POPですね。(笑)。清元というのは歌舞伎の伴奏として栄えてきて、その後は演奏だけでも楽しんで頂けるものが出てきた。」などと、内容も堅いものではなく、初心者にもわかりやすいように簡単に、笑いも誘いながら、息のあったトークセッションが進行していく。

その後は音階の違いなどを具体的に説明したり、チューニングあるある話などで時間があっという間に過ぎていく。
同じ三味線といってもその歴史や役割の違いから、共通の曲などがなく、一緒に演奏することが難しい、という。
でも、最後には、 「なかなか三者で揃うこともないので、それぞれの良いところを取ったような曲に仕上げてみました。本邦初公開ということで。」という前置きがあり、3名による特別セッションが披露された。
その後は、ちょっとだけアンコールサービスも行い、大きな拍手のなか、ワークショップが終了した。

(森正志)

配信限定プログラム

武亀セッションワークショップ〜一緒に歌ってみませんか〜

「師匠の師匠」である音楽プロデューサーの武部聡志のキーボードと実行委員長亀田誠治のベース演奏をバックに一般応募者が名曲を歌うことができるという、プレミアムなセッションワークショップ企画。
参加者は、事前に都内のスタジオでリハーサルを行い、二人のトッププロデューサーからアドバイスをもらったうえで本番に臨む。
本番は配信専用のスタジオで事前収録というかたちで行われた。

1番手は kao による「ハナミズキ」。
二人のプロデューサーとの会話から、リラックスした雰囲気ではじまった。
落ち着いた声のニュアンスとその表情から歌詞を丁寧に伝えたい、そんな気持ちと人柄が真っ直ぐに伝わる歌唱だった。

2番手の かのうみゆ は「Progress」。
「楽しんで歌いたいと思います」そう言って始まった彼女の歌はポジティブな力と明るさでこの曲に新しいイメージを与えるようだった。
直後には「イエーイ!嬉しい。」と思わず笑顔と談笑。まるで一緒にバンドをしてきたかのような雰囲気に。

3番手は 加藤梨菜 で再び雰囲気の違う「ハナミズキ」。
彼女の特徴的な「しっかりと感情を込めること」それを残しながらも俯瞰して表現するような歌唱になった。
亀田「凄い良くなった!」武部「いま良かったね。」
歌につられて奏者の楽器が歌い始める、そんな体験をみんなに見せてくれた。

4番手は Ko-sei の「Progress」。
フェイクに込める熱意と歌いだしの丁寧さ、「全集中します。」そう言った彼のすべてが楽曲をなぞるように表現されていく。
ただ歌ってみることだけでは足りなくて、同時に自分の世界観も持ってみたらもっと楽しい。それを伝えてくれるパフォーマンスだった。

5番手は 水野佳 の「アイノカタチ」。
笑顔ながらも、武部「我々も緊張するんです、この曲は。」と始まった演奏。
「私はこの歌のここが好き」彼女の歌にはそれが聞こえてくる。直後の亀田の「最高でした。」がそれを物語っていると思う。

最後は SORA の「ハナミズキ」。
感情を歌にのせる、当たり前のようで、聞き手に違和感をもたせずにそれができる人は少ない。そういう意味でSORAの歌には感情が正しくのってくる、または心地よく届く、そういう歌だった。

本来、音楽を共に奏でるということは誰にとっても楽しいこと。
それはミュージシャンを目指す人でも、趣味程度にカラオケに行く人でも、トッププロデューサーでも同じ。
「オーディションではない」「音で会話をする」そんな言葉が本当にしっくりくる、音楽を通して、同じ気持ちで共有することにボーダーはないこと、それを体験しながらみんなに伝えてくれるそんな素敵な参加者たちだった。

(森正志)

DJクマーバ

配信限定のこのプログラムでは、子どもたちに人気のキッズVTuber DJクマーバが登場!

ショーの始めには「クマよー!」と日比谷音楽祭実行委員長の亀田誠治が登場し「クマーバのおともだち、みんなつれてきて、そして、テレビのまえにいるみんなも、スマホのまえにいるみんなも、おともだちいっぱいつれてきて、かぞくでみんなおどっちゃおうよ。ひびやおんがくさいってそういうばしょなんだよ!」と配信を見ている子どもたちに語りかけた。

「クマーバもたのしんでね!」という亀田実行委員長のエールに応えるように、DJクマーバは、馴染み深い手遊び歌のメドレー、ダンスで楽しめる童謡、そして、DJクマーバのオリジナルソングまで、子どもたちが全身で楽しめる楽曲をポップなクマーバワールドの仲間たちと一緒に元気いっぱい紹介した。

(日比谷音楽祭事務局)