Playback 日比谷音楽祭2022

- Report -

KADAN/ONGAKUDO/
KOTONOHA/HIROBA
6月4日(土)レポート

文・森正志(THE FOREST/日比谷音楽祭制作委員長)

KADANステージ(日比谷公園・第二花壇)

EXILE TETSUYA with EXPG

「日比谷音楽祭2022」2日目、YAON公演のみの金曜初日に続き、日比谷公園や東京ミッドタウン日比谷のすべてのステージやエリアはこの2日目からのスタートとなった。

亀田誠治実行委員長の開会宣言の後に紹介を受けて登場したのは、今年のKADANステージのトップバッターEXILE TETSUYA with EXPG。ダンスワークショップという日比谷音楽祭はじめての企画だ。観客の前に華麗にバク転で飛び出すと、続けざまのDJプレイで、浦川翔平(THE RAMPAGE from EXILE TRIBE) が芝生と青空を興奮で満たし、続いて今回のリーダー EXILE TETSUYAが大きな拍手の盛り上がりと共に現れる。
冒頭のレクチャーからの、みんなで踊るのは、誰もが知るあの曲「Choo Choo TRAIN」。続いてカラフルな衣装の、ダンススクールEXPGの精鋭キッズダンサーによるキレキレのダンスセクションに突入すると、 小森隼(GENERATIONS from EXILE TRIBE )も参加し、名曲「WON'T BE LONG」でコラボレーションを魅せる。

GENERATIONSの楽曲を連発した後は、 EXPG高等学院も登場し EXILE の「I Wish For You」と、息つく暇なくみんなと一緒に踊ると、今度は「秘密兵器1」のタオルに続いて「秘密兵器2」として紹介された、予定外だった数原龍友(GENERATIONS from EXILE TRIBE )までもが飛び入りし、KADANの盛り上がりは最高潮に。

最後には キッズダンサー10人とEXPG高等学院15人を含めたオールラインナップで「 銀河鉄道999 」を披露。楽しさオンパレードのワークショップは、音楽にノって踊る喜びを全力で表現し、青空と芝生はたくさんのファミリーとファンの笑顔で溢れた。

オールナイトニッポン×Creepy Nuts 
スペシャルトーク in 日比谷音楽祭
~Creepy Nutsと『音楽』と『ラジオ』~

とにかく神回だらけで話題に尽きないラジオ番組、ニッポン放送「Creepy Nutsのオールナイトニッポン」が、日比谷音楽祭2022のKADANステージに登場。

ゲストに、オールナイトニッポンのプロデューサー冨山雄一氏を迎え、「オールナイトニッポン」の数々の思い出話に花を咲かせた。日本のヒップホップとして初めてヒットした「DA.YO.NE」を出した頃のEAST END×YURIのオールナイトニッポンの話、電気グルーヴやゆずなど、数々のアーティストとオールナイトニッポンの「言える範囲の」歴史に迫る。これは、レポートするのもナンセンスなので、見逃し配信をとにかく見て欲しい(見逃し配信は、2022年6月26日まで。)青空の下、芝生に座りながら深夜ラジオの話を聞くというシチュエーション込みで(しかも客席は満員!)、Creepy Nutsのファンのみならずオールナイトニッポンファンとしてもたまらないひとときだったはずだ。

絵本読み聞かせライブ《聞かせ屋。けいたろう》

日比谷音楽祭2019にも子どもたちに楽しい時間を提供した《聞かせ屋。けいたろう》。今年はKADANに登場し、ステージを使用せず、お客さんと同じ芝生の上に立ち、より親しみやすい距離での演目となった。

まずは、聞かせ屋。けいたろうの歌とウクレレ、The Music Park Orchestraのメンバーでもある田島朗子のバイオリン、河野文彦のギターという3名による「幸せなら手をたたこう」でみんなの気持ちをひとつにしてから、紙芝居と生演奏の組み合わせによる、彼らのパフォーマンスのはじまりはじまり。

最初は野菜の絵本を見せながら、子どもたちとの掛け合いと会話で進行する。子どもたちが元気に野菜の名前を答える。続いてはバスのお話。

楽器による生演奏は、あくまでも自然に物語のペースや雰囲気をつくり、聞き手を導いたり、ついて行ったり。カラフルな絵本をもっともっと豊かに彩っていく。物語のなかで体を動かし、親子のコミュニケーションも創り出しながら、楽しい公園の午後が流れていった。

こどもエリー学園 in 日比谷音楽祭 「音をみんなで絵にするぞ!」(大宮エリー)

KADANステージに大きなキャンバスが登場。実行委員長の亀田誠治が始まりのベースの音を鳴らし、それを引継ぐかたちで今度はPolarisのオオヤユウスケがギターを奏で、このワークショップがスタートした。

あっという間にステージの前に集まった子どもたちは、大宮エリー先生の「どんな音に聞こえた?」という質問に、聞こえた音のイメージを思うままに声をあげ答えている。 続いて子どもたちは順番にステージに上がり、手で直接キャンバスに黄色い線や模様を描いていく。
「あなたもやるの?」「そうそう」「できた?」「食べちゃだめよ」「まだやってない?あなた?」「はい、やったら次の人ね」「次、オレンジだと思った人!」「ナイス。いいよ」という具合に、大宮エリーのマイクが拾う子どもたちとの会話が、オオヤユウスケのギターの美しい響きとスキャットやフレーズに重なり、少しずつ色も重なっていく。

さらには、たなしんのベースも加わって、そこに子どもたちと観客のクラップも入り、音楽と重なりあって、絵の方も一緒に大きくなっていく。
最後は、たなしんの「爆発したい」オオヤユウスケの「未来を描きたい」そんな感想と一緒に、クラップして踊る子どもたちのなかで、エリー先生が仕上げの作業にとりかかる。
大きなみんなの絵が姿を現し、今日だけの特別な作品が出来上がった。

旅と音楽とキャンピングカー(GAKU-MC)

この企画は、ここ数年キャンピングカーで全国ツアーをまわっているGAKU-MCが「旅と音楽の相性の良さと、キャンピングカーの楽しさ、そして、その魅力を実際に野外でキャンピングカーを背負ってのトーク&ライブで伝える」というもの。このコンテンツではレイアウトを変則的にして、日比谷公園をいつものKADANステージとは別の角度から眺めながらトークがスタート。

昔のライブツアーでは、ライブ会場と打ち上げのお店とホテルとの移動だけになってしまうことが多かったので、本当のその土地の魅力を知ることができなかったと感じていた。でも、キャンピングカーで移動することで土地と土地の点と点が繋がって、その土地をもっと豊かに味わうことができる感覚がある、そんな話で盛り上がりながら、旅の車内のリラックスした雰囲気が目に浮かぶような「リラックスリラックス」を演奏。

アコースティックギター&ボーカルに、カホン&コーラスと、たった二人でも、ラフな準備であっても、音楽はこうも楽しく、何気ないひとときを豊かな時間にしてくれる、それを教えてくれるのも、旅とセットになったときの音楽の力なのだろう。

日比谷公園が夕方へ向かう、野外の気持ちのいい時間帯のなかで、キャンピングカーあるある、旅の思い出やオススメポイントを話しているうちにあっという間にステージは終盤に。
最後は「トラベラーズソング」を演奏。まるで一緒に旅をして、旅先で一緒に歌ってこれから夜がくる、そんな気分にさせてくれる演奏とトークセッションだった。

ONGAKUDOステージ
(日比谷公園・小音楽堂)

el tempo

「el tempo」はアルゼンチン、ブエノスアイレス発のサイン・システムを使用したリズム・イベント。 様々なハンド・サインを「コンダクター」が操り指示を出すことで、複数の奏者による即興演奏を可能とする。コンダクターを務めるのはシシド・カフカ。

彼女を円形に囲むように、ドラムセット、コンガ、ジャンベ、タムなど様々な打楽器が並び、その外側にはベースも。総勢12名。バンド界隈、ライブサポートメンバーとして名の通った選りすぐりのメンバーが名を連ねる。

手始めとばかりに、観客に背を向けたシシド・カフカのハンド・サインとアイコンタクトでチームの見事な連携による多重で高揚感あるリズムが生み出された。スラリとした長身のシシド・カフカが中心に立ち、情熱的でもクールでもある動きで指揮を執ると 、メンバーは緊張感と言うよりも、体全体でチームを率いるシシド・カフカの行方を見守りながら、集中力を徐々に高めているような表情を見せる。

今度は来場者の方を振り向き、物言わぬ、でも表情豊かに、音の中に観客を招待するようなコミュニケーションをするシシド・カフカ。演奏者たちと観客たちの間を繋ぎあわせ、でも油断のならない楽しさの渦を創り出す。
リズムのシャワーを皆で浴びているうちに時間はあっという間に過ぎ、全てがひとつに繋がったあと、笑顔でステージを去っていくシシド・カフカの颯爽とした姿が印象的だった。

西川進

昨年の日比谷音楽祭2021ではThe Music Park Orchestraのメンバーとして出演したギタリスト・プロデューサーの西川進。今回はなんと彼のソロライブを観ることができた。

西川進といえば、「感情直結型ギタリスト」として様々なアーティストの傍らでエレキギターを鳴らすイメージが強いかもしれないが、今日のONGAKUDOステージでは、そんなイメージとは異なり、西川はエレアコを持って登場した。

特徴的な赤いマッシュルームヘアーとモッズ流儀に沿った美意識はいつもと変わらないが、青空と緑の中でアコースティックギターのやさしい響きと共に美しい音色でライブがスタート。一曲目は「青空からっぽ」。暗い曲調の多い僕の曲の中から唯一明るい曲で今日の天気にぴったりだと説明をした。

「人生一度きりしかないと思って、こうやってソロ活動もはじめました」
「ギターデカいんですけど、声小さくてすみません(笑)」
「お気づきの方もいると思うんですけど、僕は歌いませんので、全部ギターで表現します」
その人柄がそのままそのギター演奏に意思として伝わりこちらまで届く。

後半からエレキギターに持ち替えると、最後の2曲「血液」と「記憶」では西川進の真骨頂ともいえるエレキギターサウンドを炸裂させ、たった一人でこの場所を巨大ロックショーに変えみせると西川進が去った後もしばらくエレキギターのサウンドの余韻が残った。

民謡クルセイダーズ

開演前から入場規制がかかるほどに期待の高まるONAGAKUDOステージで、ラテンのリズムにのって民謡クルセイダーズのライブがスタートした。ギター、キーボード、 ベース、 に サックス、トランペット、トロンボーンのホーン隊、更にティンバレス、ボンゴ、コンガ、という編成のバンドに二人のお囃子とヴォーカルが加わる総勢12名。迫力あるラテンサウンドにお囃子と民謡の歌声が組み合わさる、究極の民族音楽の混合モデルである。

民謡クルセイダーズ、通称「民クル」はギターの田中克海とボーカルのフレディ塚本の2名によって、民謡を「民衆のための音楽」として復活させることを目的として2012年に結成された。
彼らのライブはまるで海外で伝統音楽を楽しんでいるかのような、または彼らが海外から来たかのような、いや、最初から日本でお祭りに参加していたような不思議な高揚感と一体感を作り出していく。

パーカッションのリズムとホーン隊が作り出す、明らかな異国感の中にしっかりと迷うことなく乗っかってくる芯の通った民謡ボーカルが、日本人の中にある何かを刺激しているのかもしれないが、これほどまでにぴったりと合体できることに驚く。

最後の「炭坑節」ではメンバー紹介からの「月が~、出た、出た、月が出た、日比谷音楽堂に!」「ヨイヨイ!」で本日の締め。各地のフェスはもちろん、世界をも虜にしつつあるこのバンドの勢いと観客の熱量がそのまま現れたステージだった。

和楽器グループ 龍声 ~Ryusei~

既に日比谷音楽祭になくてはならない存在になっている5人組和楽器グループ 龍声~Ryusei~。箏(こと)・尺八・三味線・17絃・琵琶の5種類の楽器たちの「日本の音色」で伝統的な古典曲から現代のポップミュージックまで幅広く披露し、一方では、和楽器ワークショップも開催し、誰もが和楽器に触れ、演奏を体験することができるような場づくりをするなど、日比谷音楽祭の目指すボーダーレスな音楽との出会いに重要な役割を担っている。

夕方に近づく小音楽堂の景色の中に、箏などの和楽器と共に5人の着物姿が並ぶ。座って演奏する楽器が多いこともあり、その背景には、日比谷公園内の芝生や噴水、行きかう人々が見え、ひと時の落ち着きを与えるように演奏がスタートする。

使用楽器と編成を変えながら、そして前後に丁寧に説明を加えながら、「さん・さん・さくら」「千本桜」「鹿の遠音」「ハナミズキ」と長く弾き継がれてきた古典曲とJ―POPとが交互にそれでいて違和感なく日本の音色で披露されていく。

最後に演奏されたのは「残響散歌」。この曲のもつドラマチックさと演奏者たちの品格が一つになり、見事なフィナーレとなった。

Polaris

この日のONGAKUDOの最後のステージはPolaris。
夏のような暑さを感じた昼から少し風が涼しく感じられるようになった頃、「光と影」でスタート。
浮遊感。周りの空気が溶けはじめ混ざっていくような、空がゆっくりと下がってくるような、すぐに期待通りの場所に、このONGAKUDOステージを連れていってくれる。

Polarisの音楽はベースが沈んでいなくなってしまうことがなく、いつもに同じところに、まるで生命の源とか鼓動のように真ん中に存在していて、そのまわりでドラムが動きを発生させて、最後に優しいボーカルとギターが知性とアート性を加える。それが独特な、時空が歪んでいくような、永遠を感じるような大きな浮遊感を生んで続いていく。

夕暮れが近づいて、後ろに日比谷公園の風景や空を透かした日比谷音楽祭のロゴが照明で色づいてくるとONGAKUDOステージが何かの錯覚のような、幻のような重厚感と透明感のある幻想的な幸福で満たされていくのがわかる。

再びこうして野外で音楽を共有することを待ちわびていたPolaris。その喜びと、価値と、代えがたい何かを残響と余韻と共にしっかりと日比谷音楽祭に残していった。

KOTONOHAステージ(東京ミッドタウン日比谷・パークビューガーデン)

アスハン

馬頭琴という楽器は文字どおり、馬の頭部の彫刻を配し、弦や弓も馬の毛を束ねたものを利用したモンゴル民族の弦楽器である。愛馬の死を悼んでつくったという起源伝説などから日本でもその名を知っている人は多いと思うが、その音色を生で聴いたことがある人は多くないはず。

真っ赤な民族衣装を纏ったアスハンは曲のもつ意味やその由来を都度説明してから丁寧に演奏をしていく。馬頭琴はピアノと競争するように、イメージに反してスピーディーな速弾きもあれば、想像していたような艶と品格に溢れ、ゆったりと情緒に誘うシーンもつくりあげ、2弦のこの楽器の懐の深さを1曲目から教えてくれた。

続いて「難しい曲です。」として紹介された「はるかな牧場」。モンゴルの大草原で生きる人々を描いたこの曲は、アスハンの真後ろに見える日比谷公園の自然と、遠く離れたモンゴルの大草原をこの青空を通して繋ぎながら、互いの美しさを魅せるような、幾重もの感情が壮大に響き渡る曲。後半は独特の歌唱法と美しい弦の響きとピアノが交錯するカオティックな曲や、たくさんの馬が疾走するパワフルな曲など、馬頭琴という楽器の生み出す様々なシーンに圧倒される豊かなステージであった。

荒谷翔大(yonawo)

昨年は4人組の新世代バンドyonawoとしてONGAKUDOステージに出演し、都会的で洗練されたバンドサウンドで魅せた荒谷翔大。今回は一人、東京ミッドタウン日比谷のパークビューガーデン、KOTONOHAステージに登場。

ギターを抱えて現れ、座ると、エレアコのギター音が青空に伝わって、すぐにその場は野外フェスのちょうどよいサイズ感のステージの、心地のよい午後のような、本当にちょうどよい柔らかさになる。少し風の影響を受けながらも、来場者に気さくに話しかけるようにしながら発表前のソロ曲を数々と披露。

あっという間に終わる短い曲、シンプルな曲、友人達とつくったという曲。届く声から共通して受け取れるのは、パーソナルな距離感で伝えようとする丁寧な優しさ。一方でバンドと違い、ソロ曲におけるその声には一人だからこその力強さが加わって、リフレインにはボーカリスト荒谷翔大の精神性が現れる。心地よい贅沢な午後をつくってライブが終わった。

RIO

RIOのウクレレが東京ミッドタウン日比谷の屋外に吹く都会の風をあっという間に「ハワイの風」に変えてみせ、ライブがスタート。

2曲目の「Transit」は「いろいろなところを経由してここに来た」そんな心情を音に乗せて、聴く者をいろいろな世界の景色へと誘う。少しずつ夕暮れに向かう美しい日比谷公園の上空をRIOのウクレレの音が飛んでいく。

ここでゲスト出演のマレー飛鳥が登場し、皇居の美しい緑をバックにバイオリンとウクレレによる「Blackbird」「Blowin' In The Wind」の名曲メドレーがさらに美しい夕方の時間を彩る。
「風があるけど、私たちはハワイ在住歴があるから風は嬉しい」(マレー飛鳥)
そんなMCのあと、二人は少し強くなってきた風に負けることもなく、乗りこなし、夕陽を受けながらこの日の東京ミッドタウン日比谷、KOTONOHAステージを見事に締めくくった。

HIROBAステージ(東京ミッドタウン日比谷・日比谷ステップ広場)

空に油 meets Cru Cru Cirque DX with HISASHI & うつみようこ

バンドとサーカスが融合したパフォーマンス。簡単に言葉にするとそういうことではあるのだが、「見たことのないものを、今わたしは見ている」「ところでここはどこ?」
そんな摩訶不思議な気持ちにさせられる。普段は別々に活動をしている「空に油」「Cru Cru Cirque」「HISASHI」「うつみようこ」がコラボレーションして生み出す非日常ステージだ。

録音音源ではない、生の歌唱がもつ感情の強弱や揺らぎと、熱量をもって自在に変化するバンドの生演奏が、大道芸パフォーマンスに対して、視覚からくる情報とはまったく違う物語を付加してみせる。

一見、関係性がないようであっても互いに感じ合いセッションをしている独特の高揚感、パフォーマーはステージと客席を関係なく自由に使い、その場全体が一つの空間として飲み込まれていく。コンサートとも違い、舞台でもない。
「そのなかに自分は、一体いつからいたのか?」「いつまででもいたい」そんな時間だった。

ATSUSHI TAKAHASHI × 辻コースケ

日本の音楽シーンにおいて、とりわけフェスシーンにおいて、コンテンポラリーダンスの即興による芸術性と音楽を繋ぐこと、メッセージを伝えること、人と人を繋ぐことにおける特別な存在感を示してきたATSUSHI TAKAHASHI。Dragon Ashのメンバーとして長年活動をしてきて、現在はソロダンサー・舞踏家・舞踊家としての道を歩んでおり、この直後には新たな表現の場としてパリに向かう。

今回のライブは辻コースケのパーカッションの音に呼応するように、時にぶつかり合うようなパフォーマンスとなった。

人々の行きかう街中のステージにあって、時が止まったような瞬間から、再び激しく立ち昇るような神々しさをもつ表現力に皆、足を止めて見入っているが、このライブにはもう一つ特別な試みがあった。映像制作などを行うクリエイティブカンパニーDIRECTIONSが企画したワークショップに参加した子どもたち7名が、カメラマンとスイッチャーとしてこのライブ映像を配信として届けているのだ。
プロのカメラマンではセオリー通りになってしまうかもしれない。それを子どもたちが感じるままにライブを撮ると、どこに着目し、どう伝えようとして、どのように切り取られていくのだろうか。自由×自由の競演。これほどATSUSHIと相性の良いプロジェクトもないかもしれない。後半に向かい、だんだんとパフォーマンスに反応するように、引っ張られるように、映像の様子が変わってくるのが観ているこちらにも手に取るように伝わってくる。実にスリリングで力溢れるステージとなった。

小倉博和

言わずと知れた日本を代表するギタリスト小倉博和。昨年の日比谷音楽祭2021は無観客生配信での開催だったため、クリエイティブで独創的な配信ライブとなったが、今回は日比谷音楽祭のことと、今日の心持ちを観客に丁寧に伝えてからライブがスタートした。挨拶が終わりマイクを置くやいなや、圧倒的に心地よいギターの音が広がる。雄弁。そしてなんだか大きい。きっとギターを弾いた事のない人でも、「同じようにはできない」と感覚的にわかってしまう、そういう偉大な演奏家の持つ力が1曲目から伝わってくる。

最初の曲を終え、マイクを持って「いや~気持ちいいですね」と一言。「いや、きっと、観客と街中は、もっと気持ちよくなっていますよ」という気持ちになる。

続いて、木と音にまつわるノスタルジックな曲や、新しいまっさらな気持ちを持ち続けたいという想いを込めた曲まで、とにかくギターという楽器の本質が響きにある、ということをトップオブトップのギタリストとして惜しげもなく披露し、上質でハッピーな時間を創り上げた。階段の上まで埋まった客席全体は心地よい空気で満たされ、夕暮れの訪れと共にライブが終了した。

民謡ユニット こでらんに~

ここは都会のど真ん中、東京ミッドタウン日比谷の夕暮れに、「民謡ユニット こでらんに~」が登場した。メンバーは、「民謡クルセイダーズ」のVoでもある【フレディ塚本】、津軽三味線弾きの【秋山和久】、太鼓・おはやしの【ちゃんゆか】、篠笛・おはやしの【ミカド香奈子】の4名。
先の ONGAKUDOステージでの民謡クルセイダーズは、ラテンのバンドサウンドによるパワフルさと異国感が持ち味だったが、こちらは一転して、日本人の細胞にしっかりと刻まれた原風景ともいえる民謡が鳴り響く。『こでらんに~』とは、福島弁で「最高~」という意味。

フレディ塚本の「というわけで、盆踊り大会はじめます」という言葉から笛が、お囃子が、三味線が、そして手拍子が鳴り響く。録音された音源に太鼓だけ生演奏で併せた音楽によるお祭りの風景はよくあるが、全てが生演奏であることで熱量とグルーヴ、コミュニケーションが段違いに明るく、温かいものになる。

1曲目、2曲目と、お客さんがステージと客席の間で踊りだし、数名に増え、輪になって踊りはじめる。手拍子と笑い声、あっという間に日本の古き良きお祭りの様子がこの日比谷の街中で再現されていく。続いて、秋山和久による津軽三味線のソロ演奏。「津軽じょんがら節曲弾き」。徐々に激しさを増す曲調にあわせて客席が沸く。

そして、ここからは盆踊り決定版コーナー。まずは「ドンパン節」。レクチャーを終え、まもなく有志の踊り手たちがステージ前に集まってくる。続いて、フレディ塚本の「そのまま座ってていいんですか~?(笑)」「会津磐梯山できる人!」という呼びかけで次へ。笛の音と「チョイサ~。チョイサ!」と掛け声。

そして、「東京音頭」の頃には完全にお祭りの風景に。最後はおなじみ、誰もが知るフレーズ「月が~出た出た」の「炭坑節」。
文字通り、心をつかむ。皆で盛り上がる。民謡、強い。

「こでらんに~(最高)」なかたちで、この日の東京ミッドタウン日比谷の全ステージが終了した。