Playback 日比谷音楽祭2022

- Report -

待ち望んでいた青空の下でのセッション
Hibiya Dream Session 1 /
6月4日(土) YAONステージ(日比谷公園大音楽堂)

谷岡正浩(編集者・ライター)

日比谷音楽祭実行委員長・亀田誠治を中心に凄腕のミュージシャンたちが集まったハウスバンド、その名もThe Music Park Orchestra。この日から計3回、YAONステージ(日比谷公園大音楽堂(野音))で行われるスペシャルセッション“Hibiya Dream Session”のために結成されたスペシャルバンドだ。その顔ぶれを紹介しておくと、亀田誠治(Ba)、河村“カースケ”智康(Dr)、佐橋佳幸(Gt)、斎藤有太(Key)、皆川真人(Key)、四家卯大(Vc)、田島朗子(Vl)、山本拓夫(Sax)、西村浩二(Tp)、小田原ODY友洋(Cho)の総勢10名。まさに日本の音楽シーンを支える面々と言っても過言ではない。

彼らに続いて登場したのは、亀田実行委員長が“Future Music Power”と命名したフレッシュな3名のアーティスト。2009年生まれのスーパードラマー・YOYOKA、20歳の超絶ウクレレ奏者・RIO、そして現在、武蔵野音楽大学3年生で全盲のシンガーソングライターとして活動する佐藤ひらり。彼らとセッションするオープニング楽曲は、「今日から、ここから 2022」だ。この曲は、昨年、コロナ禍で無観客生配信での開催となった『日比谷音楽祭2021』にむけて、亀田誠治といきものがかりがリモートで制作したナンバーで、2021年の日比谷音楽祭のラストを飾った曲だ。今年は晴れ渡る空の下、多くのオーディエンスと共に、若いアーティストたちが中心になって行われたこの演奏は、楽曲の可能性をさらに押し広げるものとなった。これからも『日比谷音楽祭』のアンセムとして歌い継がれていく楽曲になるだろう。

カウントに続いてシンセの音色と共にステージに現れたのはSKY-HI。4月13日にリリースしたばかりの新曲「Bare-Bare」を披露した。ビートメイカーのhokutoによるトラックを全生音でThe Music Park Orchestraが表現していく音楽の境界線のなさ、そしてそこにSKY-HIが軽々と乗ってフロウしていく。
「諦めずに音楽のバトンをつないできてくれたことに感謝します!あなたがあなた自身であればそれでいいじゃないって気持ちを込めてこんなの行こうぜ!」(SKY-HI)

飛び出したのはなんと、Green Day「Minority」のカバー。もちろんただのカバーではない。フリースタイル的にリリックを紡ぎ、会場を盛り上げていく。印象的なイントロにオーディエンスが沸き、パフォーマンスしたのは自身が代表を務めるマネジメント/レーベルのBMSGが主催するオーディション『THE FIRST』のために書き下ろした「To The First」。居場所がないなら自分たちで作ればいいと高らかに宣言する“はじまりの歌”だ。自身の嘘のない言葉と音楽で次にバトンを託してSKY-HIはステージを終えた。

エネルギッシュなパフォーマンスの余韻が残る中、The Music Park Orchestraが演奏を始めたのはインストゥルメンタルナンバー。テレビ東京系で放映されている『新美の巨人たち』のオープニングテーマ「カミーユ」とエンディングテーマ「雨のカフェテラス」だ。大正時代に建てられた日比谷公園大音楽堂はまさに“美の巨人”と言うべき歴史的建築物だ。来年がオープン100周年となる野音の次の100年に想いを馳せる素晴らしい時間だった。

続いて登場したのは、『日比谷音楽祭』に第1回目から出演している新妻聖子。1曲目に披露したのは「ひまわり“SUNWARD”」。オリジナルは中島みゆきで、新妻が自身のアルバム『Colors of Life』でカバーした楽曲だ。
「この曲を歌うときはいつも今日のような真っ青な空と真っ黄色に咲き誇ったひまわり畑を想像して歌います。空には垣根も境界線も何もない、ノーボーダーなんですよね。ひとつにつながっているこの空の先にあるいろんな命に想いを馳せながらThe Music Park Orchestraの皆さんと一緒に演奏したいと思います」

当たり前だが、音楽のジャンルというのはあくまで便宜上のカテゴリに過ぎず、今届けなければいけない歌、どうしようもなく心に響く曲というのは意外なところからやってくるものだと思う。もし今日、『日比谷音楽祭』に参加していなければ「ひまわり“SUNWARD”」という曲を知ることはなかったという人もいるかもしれない。もし新妻聖子がこの曲をカバーしなければ、ここで披露されることはなかったかもしれない。そうした小さな奇跡の連鎖が続いていく限り、音楽は鳴り止まないし、必要な人や場所に必ず届くものと信じたい。これを書いている筆者は、恥ずかしながらミュージカルを観た経験がほとんどない。でもこれは劇場に行ってみないといけないなと強く思った。そうした気づきのきっかけを、次に披露した「I Will Always Love You」のミュージカル・バージョンを聴きながら与えてもらった気がした。ホイットニー・ヒューストンの超有名曲もミュージカルの舞台で聴けばまた違う発見があるに違いない。新妻聖子の披露した2曲によって、また新しい楽しみが増えたという人がたくさんいるのではないかということを、鳴り止まない拍手が表しているようだった。

“Hibiya Dream Session 1”のトリを務めるのは、Def Tech。彼らがステージに登場するなりオーディエンスが総立ちになると、その興奮の中、MicroとShenのハーモニーが響く。「My Way」だ。野音を吹き抜ける風と音楽が溶け合って、本当に気持ちいい。たぶんこの感じはその場にいる人だけではなく、配信を通じて見ている人にも伝わっているのではないか。音楽には“善きもの”を伝えていく圧倒的な力があると再認識した。『日比谷音楽祭』が掲げる“ボーダーレス(ボーダーを越える)”というのはまさにそうしたことなのだと思う。何かを“超える”と考えると少しハードルが高そうに聞こえるかもしれないが、何かを“感じる”ことはそんなに難しいことではない。

未発表の新曲「2 Good 2 Be True」ではシティポップ、ヒップホップを彼ららしいハイブリッドなセンスで仕上げた、まさに今の時代が求めている楽曲だ。最後に披露した「おんがく♬MUSIC」では、YOYOKAも加わってのセッションが実現した。音楽そのものをテーマにつくったこの曲は、亀田実行委員長が「絶対に一緒にやりたい!」と駄々をこねるくらいやりたかったものだという。後半のコーラス部分ではMicroが『日比谷音楽祭』のフラッグがかかっている上段の方まで登り、手を振ってオーディエンスと一体となった。
「世界に平和を! 音楽に力を! 武器を楽器に!」

大切な何かがきっと届いたと確信できたセッションだった。

Hibiya Dream Session 1 の見逃し配信は、6月18日(土)~6月26日(日)の間、U-NEXTにてご視聴いただけます。
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