Playback 日比谷音楽祭2024

Report レポート

Hibiya Dream Session 2
ライブレポート(6/9)

「今日は音楽のある一日を皆さんに心から堪能して、感じてもらって。ここで得た感動をどうぞお家に持って帰ったり、友達に分け与えたり、大切な人と一緒にシェアして、素晴らしい一日を。そしてこれからの毎日を楽しく過ごしてください。締めの挨拶みたくなっちゃったけど(笑)、今日はこのアーティストから始めたいと思います。僕と一緒にたくさん音楽を作ってきた大切な、大切な9人の友達です。東京スカパラダイスオーケストラ!!」

亀田誠治のMCに応えて颯爽とスカパラのメンバーがステージに登場。オーディエンスは早くも最高潮のような盛り上がりの手拍子に。「日比谷音楽祭―ッ!! 1曲目からアゲてくぜー!!」。GAMOの煽りから放たれた1曲目はまさに言葉通りの「火の玉ジャイヴ」だ。

「踊る準備はいいですかー!?」。ステージの上下(かみしも)を練り歩く。楽器を左右に降るアクションがキマる。流石、海外でも歴戦の経験を持つスカパラ。開始から数分ですっかり会場は熱気の渦に。

そして加藤隆志のギターリフが風雲急を告げて、「ルパン三世のテーマ」、さらにその勢いのまま「DOWN BEAT STOMP」へと繋げる。ハンドマイクを持ってフロントロウで観客に手を振る谷中敦と大森はじめ。楽しげに暴れまくる川上つよし、北原雅彦、NARGO、GAMO、加藤隆志。バッキングやリズムを刻みながら笑顔でコーラスに興じる沖祐市と茂木欣一。ステージが見どころだらけで目が追い付かない。

「スペシャルなセッションをいきたいと思います。BASS、亀田誠治!!」。加藤の呼び込みで亀田が参加して始まったのは「MONSTER ROCK」。沖のハモンドソロ、加藤のギターソロから亀田のベースソロへ。実行委員長のベース魂が激しく炸裂した。

「最高のムードですね。幸せでしかないよ。思い切り叫んで行こうぜ!!」という谷中の雄叫びから田島貴男(Original Love)が登場。曲はもちろん、「めくれたオレンジ」だ。田島は終始飛び跳ねステージを闊歩。もう、とにかく元気!! ハリと艶気に満ちた歌声で場を盛り上げるだけ盛り上げて颯爽と去っていった。

さらに登場したのは石川さゆり。フラワープリントのワンピース姿で現れた石川は、ある年の年末、石川の家で過ごした思い出など、谷中と両者の親交を微笑ましく語り、谷中作詞/NARGO作曲による石川のナンバー「虹が見えるでしょう」を披露。低音を駆使したジャジーな石川のボーカルはフレッシュな魅力に溢れている。呼吸もぴったり、最後は石川のかわいらしいジャンプで演奏を締めた。

まだまだスペシャルなコラボはとまらない。続いては石原慎也(Saucy Dog)がステージへ。曲は「紋白蝶」。空をつんざくような切ないハイトーンのボーカルが野音に響き渡る。石原はボーカルのみならずチューバも抱えて大活躍。最後はスカパラと石原にThe Music Park Orchestraを加えたダブルオーケストラで「Paradise Has No Border 」。もう何人いるんだか分からない大人数でステージを練り歩いては客席を煽りに煽りまくる。最高にハッピーな祝祭感だった。

「スカパラはもう楽屋が部室。音楽部(笑)。今日はスポーティーでいいんじゃない? みんな元気になって帰るよ。尊い!」と亀田が笑う。ここから演奏のバトンはThe Music Park Orchestraに託され、再び田島貴男(Original Love)が登場。「チワッス」と飄々とした挨拶からの「接吻」は、あまりにもイカしていてズルい。この曲もまた野音で聴くには絶好なナンバーだ。フレンドリーなコミュニケーションとソウルフルな歌声で極上の時間を届けてくれた。

続いてはTOMOO。22年にメジャーデビューした注目のシンガーソングライターである。「ここで歌わせていただけるのは夢のようで本当に嬉しいです。健やかな空気を皆さんと共有できたらと、ぜひお届けしたいと思って、一番新しい歌を」と「あわいに」を披露。ファルセットを駆使した爽やかな歌声をThe Music Park Orchestraが鮮やかな演奏でサポートする。

そして「何かいい風が吹いた気がしました。私は今28歳なんですけど、大人になるといろいろ葛藤することってあるんだなってちょっとずつ知って。そういう中でも、自分の中に大事に持っておきたい子供心とか強さを考えている中で出来た曲です」というMCから「Super Ball」へ。28歳の彼女がいまだからこそ記せたメッセージのような一曲にオーディエンスは身体を揺らして聴き入っていた。

ここでもう一度、石原慎也がステージに。立教大学手話サークルHand Shapeとともに披露されたのはSaucy Dogの代表曲「シンデレラボーイ」。立教大学手話サークルHand Shapeは、毎年、日比谷音楽祭で“手話うた”を届けている常連の一組。女性目線の切ない気持ちがHand Shapeの手話と優しくシンクロ。配信ではリリックの字幕も載せて視聴者に届けられた。

「毎回日比谷音楽祭ではいろいろな人に音楽を届ける様々な取り組みをしているんだけど、そういう思いを慎也くんのような世代が受け取り、実行してくれることが本当に素晴らしいと思います」。亀田のMCに客席が拍手で応える。

「そしてとてもとても大切で大好きなこの先輩をお呼びしたいと思います。佐野元春!!」。ギターを抱えたレザージャケット姿で現れた佐野が繰り出したのは「Youngbloods」。しかもリリースされたばかりのNew Recording 2024バージョンだ。精悍な存在感の佐野が放つ言葉とメロディをストリングス、キーボードの旋律が鮮やかに彩る。

「今回、この日比谷音楽祭に出演できることをとても嬉しく思っています。亀田さんの情熱でこの音楽祭が実現出来ているんだと思います。亀田さんに大きな拍手を」と佐野が亀田にエールを送ると、続いてはヒット曲「約束の橋」へ。こちらもNew Recording 2024バージョンだ。思えば70年代から都市の風景をスケッチし続けてきた佐野の歌がこの野音にフィットしないわけがない。〈今までの君はまちがいじゃない〉、〈これからの君はまちがいじゃない〉というリリックは、オーディエンスはもちろん、誰より日比谷音楽祭を牽引する亀田にとって、最高のアンセムとなったのではないだろうか。

最後はもう一度TOMOO、石原慎也、石川さゆりを交えて、全員で佐野の名曲「サムデイ」をパフォーマンス。世代もジャンルも超越したそれぞれのみずみずしい歌声に野音のオーディエンスが手を振って応える。佐野が「拓ちゃん!」と紹介してThe Music Park Orchestraの山本拓夫のサックスソロに繋げる。山本と佐野は過去何度もステージを共にしてきた旧知の間柄なのだ。

〈信じる心いつまでも サムデイ〉。大団円とも言えるハートフルなエンディングでHibiya Dream Session 2は幕を閉じた。

「最後の「サムデイ」は、本当にこんな形でしか(=ここでしか)聴けないといけないと思う」。「みんなと音楽を繋いでいきたいと心から思っています。ありがとうございました!」と亀田。終演後のSEに「サタディ・イン・ザ・パーク」(シカゴ)が流れる中、オーディエンスの温かい拍手が続いていた。

文:内田正樹