Playback 日比谷音楽祭2025

Report レポート

Hibiya Dream Session 2
ライブレポート(6/1)

6月1日、定刻。亀田誠治がステージに登場。「昨日は寒くて雨も降ったり大変だったんですけど、今日はおかげさまでいい天気になって絶好のコンサート、野外フェス日和だと思います。本当にとびきりのアーティストを集めておりますので、最後まで楽しんでください」という挨拶から清塚信也が呼び込まれる。

清塚はスキップで登場すると亀田とハイファイブ、声援を受けてピアノの椅子に着くと、すかさず美しいメロディを弾きはじめる。『ノクターン』、一瞬、『大きな古時計』(?)や、某胃腸薬のCMでお馴染み『24の前奏曲作品28 第7番 イ長調』を挟んでの『幻想即興曲』、さらには『英雄』など、流麗なショパンメドレーを奏でていった。

パフォーマンスを終えると開口一番、「私の行いがちょっといいからって、こんなにいい日和になってうれしい!」と、流石のMC力でオーディエンスを沸かせる清塚。「ショパンがここで鳴るなんて最高じゃないですか」と亀田ら“The Music Park Orchestra”を呼び込む。「ショパンは39歳で死んじゃったけど、200年後も曲が残った」というトークでクラシックの面白さを伝えると、2曲目は『This Midnight』。彼のアルバム『Transcription』収録のこの曲は、ベートーヴェンの『悲壮 ソナタ第2楽章』を用いたビリー・ジョエルの『This Night』から着想を得て、さらに“信也”の手でベートーヴェンを“深夜”のイメージと融合させたナンバー。The Music Park Orchestraの彩り豊かなアンサンブルととともに、モダンなベートーヴェンの調べが午後の日比谷にこだました。

そして、常連組から黄色のドレスに身を包んだ新妻聖子が登場。「今年もたくさんの笑顔が咲いていますね」と語りかけると、『レ・ミゼラブル』より「夢やぶれて」を披露。The Music Park Orchestraの堅牢な演奏にのせた圧倒的な声量と安定のピッチを誇る歌声で、まさに場内は“野音劇場”に。

ここでドラマーのYOYOKAがバンドに合流。現在15歳の彼女も、まさにこの日比谷音楽祭とともに成長してきた常連組の一人。「もう身長が私と同じになっちゃった」と新妻が微笑む。「皆でアンパンマンになって愛と勇気をお届けできたら」と、艷と凛々しさ、力強さと華やかさを湛えた『アンパンマンのマーチ』を2曲目に届けると、新妻は軽やかに舞いながらステージを後にした。

続いての登場はソプラニスタの岡本知高。「こういうボーダーレスな音楽祭に(自身は)もってこいだと思って」「亀田さんの笑顔にやられました。亀田さんとの出会いのおかげで皆さんにお会いできました」というフレンドリーなMCから、『Boléro Ⅳ〜New Breath〜』へ。The Music Park OrchestraとYOYOKAが奏でる、あのモーリス・ラヴェルの『ボレロ』の旋律に、岡本の見事なソプラノの繊細にしてダイナミックなボーカルが融合し、日比谷を幻想的な世界に染め上げた。

ここでYOYOKAがステージを去り観客が拍手。岡本は改めてオーディエンスへの感謝を伝えると、清塚、新妻を呼び込む。「日比谷中の木が揺れてましたよ」(新妻)、「あそこ(空)にアンパンマン飛んでたよ?」(岡本)、「マジ!?」(新妻)という軽妙なやり取りから、「この歌のメッセージに心を打たれました。大切だからこそ目に見えないもの」と、かねてから亀田もフェイバリットだった坂本九の名曲『心の瞳』ヘ。清塚のピアノから岡本、新妻が、オーディエンスに語りかけ、寄り添うようなハーモニーを震わせる。演奏後、「自分で演奏していても心が洗われた」という亀田の言葉通り、この日の名シーンの一つだった。

しっとりとした空気から一転、軽快なドラムのリズムに誘われて登場したのは岸谷香。プリンセス プリンセスのヒット曲『Diamonds〈ダイアモンド〉』だ。ステージを楽しそうに闊歩する岸谷の歌声に、オーディエンスの誰もが手拍子で応える。

「亀田さんから野音100周年の実行委員にお誘いいただいて。私からも亀田さんにお願いをしまして。お願いしたりされたりの関係です」と、岸谷のバンドプロジェクト Unlock the girlsのナンバーから、亀田が編曲/プロデュースを手掛けた『ボディガード』を披露。子を思う母という存在をボディガードにたとえたポップなロックナンバーだ。

さらに、「これからの季節にぴったりなナンバー」(岸谷)と、やはりプリンセス プリンセスのヒット曲『世界でいちばん熱い夏』へ。手拍子とともに飛び跳ねてノリノリのオーディエンスもたくさんいる。「何か80年代、90年代の曲って、やっぱり心に残っているものが多いよね」(亀田)。まさに岸谷ならではの“ポップンロール”なステージとなった。

「幸せな時間はまだまだ続きます」という亀田の言葉からバンドの演奏がスタート。名曲『イッサイガッサイ』のイントロとくれば、もちろん登場するのはこのセッションのトリを飾るKREVAだ。客席にはKREVAのツアーグッズのタオルもちらほら。お馴染み、「Dr.K」の名乗りも高らかに、腕を左右に振って応えるオーディエンスのテンションをゆるやかに、そして確実に盛り上げていく。

「今年も来てくれてありがとう」(亀田)。「亀田さんと一緒に作った曲を12年ぶりにやります!」(KREVA)。「そのための仲間を紹介します」(亀田)と、立教大学 手話サークル Hand Shapeが呼び込まれる。「この歌を歌うことが、まさにこの曲のタイトル通りになると思います」という一言から、“KREVA&亀田誠治”名義で2013年にリリースされた『恩返し』へ。〈 何から何まで話す事ができるわけないけど / ほんの少しでも / 心から吐き出してくれるなら / 受け止めてみせるよ 〉と、Hand Shapeによる“手話うた”とともに、じっくりと語りかけるような“恩返し”の思いを歌い上げる。

ラスト、「皆で歌いたいじゃないですか。練習すればいいんですよ」(KREVA)と、オーディエンスとコール&レスポンスを練習して、『Na Na Na』へ。力強いKREVAのボーカルに応えて、オーディエンスが揃って声を上げ、腕を振り上げ、クライマックスに相応しい盛り上がりを見せた。最後は改めて本日のキャストが全員揃って挨拶。夏の訪れに相応しい、清々しさと誠実な思いに満ちたSessionだった。

文:内田正樹