Playback 日比谷音楽祭2026

Report レポート

イベントレポートDAY2
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改めて言うまでもないが、日比谷音楽祭は「親子孫3世代、誰もが楽しめるフリーでボーダーレスな音楽祭」というコンセプトを大切にしてきた。このコンセプトが意味するところは、音楽を楽しむのは音楽活動をしているアーティストやそのファンだけではなく、音楽との関わり方や興味の深さにかかわらず、子どもからお年寄りまで、誰もが音楽を楽しむことができるということだ。

日比谷音楽祭は音楽を気軽に楽しめて、本気の挑戦もできる、そんな場所になっている。音楽と一緒にどう生きていくか、そんなことを考えた2日目をレポートしたい。

皇居ラン後にふらっとライブ。生活とともにある音楽

29歳になり、最近ランニングを始めた。これまでしっかりとした運動経験もなく音楽フェスで走り回るばかりだったが、より長い間フェスを楽しめる体力が欲しくなり、皇居の周りを時々走っている。

ということで、2日目の朝は皇居ランでスタートした。1周5kmをじっくり走り、汗をかいてすっきりしたらHIROBAステージ (東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場)へ。生活の延長線上で音楽を楽しめるのも日比谷音楽祭の魅力の一つ。目的は、色々なプレイリストで聴いて気になっていたRol3ertだ。

2025年から本格的にソロ活動をスタートしたRol3ertは、音源の完成度の高さでも注目を集めているが、ライブの佇まいも20歳とは思えないオーラを放っていた。この日はピアノ弾き語りで、初のオリジナル楽曲“sweet tear”を披露すると、その伸びやかな歌声でどんどん人が集まってくる。“savior”から直近でリリースされた新曲“Boy”、そして6月24日にリリースされるというEP『Kodoku』から“Kodoku”を披露する。

「楽しみなこととか、楽しみだけじゃないんですけど、いろいろぐるぐる考えて眠れないみたいな時に書いた曲です」

過度に自身を飾り立てるようなこともなく、自分の部屋からぽっと出てきたような落ち着いた語り口の楽曲説明で演奏を始めたのは“meaning”。アメリカ生まれ、2歳から日本育ちの彼は英詞をメインに使うが、日本語の歌詞も含まれる。そんな彼だからこその表現が、楽曲に独自の彩りを添えている。新しいアーティストをサブスクやYouTubeで知ることも多いが、日比谷音楽祭は毎年新しい世代のアーティストをブッキングしているので、生のライブで知らないアーティストに出会えることが嬉しい。

「ASOBI」 (日比谷公園 草地広場)でキッズたちも大喜び

さて、世代を問わず楽しめる音楽祭。2日目、ONIWAステージ(日比谷公園 芝庭広場)のトップバッターは、NHK Eテレの家族向けバラエティ番組『ウェルカム!よきまるハウス』から生まれたスペシャルバンドだ。Eテレの人気キャラクター・サボさんとシュッシュが登場すると、会場のキッズたちが大喜びしている。

さらにキッズが主役のエリアとなっているのが、「ASOBI」エリア(日比谷公園 草地広場)。この日一番キッズが集まっていたのは、「みんなで楽しくドラミング『ドラムサークル』」。参加者みんなで円になり、太鼓や様々な打楽器を手に、とにかく叩いて奏でる。「叩く」という誰もができる簡単な動作で音を鳴らす一体感は、昔の祭りから変わらない喜びだ。

恒例の「のびのび歌おう!キッズファミリーカラオケ」は、毎年選曲にその年のヒットソングが反映されるので面白い。今年はHANAの“ROSE”を歌っている女の子がいて、両親が好きなのかと想像する。英詞を歌いこなす少女を見て、自分も小さい頃、カラオケでMISIAの“Everything”で初めて英語を歌ったことを思い出した。

このエリアにもキッチンカーが沢山並んでいる。実は日比谷音楽祭のフードコンテンツはシェフの森枝幹がオフィシャルフードディレクターとしてコーディネートしている。日比谷公園に佇む創業120年を超える老舗洋食レストラン 日比谷松本楼を始めとして、各地のフェスに引っ張りだこの人気店・青果ミコト屋や毎年恒例のCRAZY PIZZA:LIFE、フェスには珍しいうなぎ串を提供する八重洲鰻はし本など、どのフードを食べるか非常に悩む。

そんな中でも『ミシュランガイド東京2026』のビブグルマンに選出されたという人気タイ料理店 Night Marketのグリーンカレーをいただく。ピリッとした辛さが火照った身体にちょうどいい。暑いからこそ、水分補給も栄養補給も怠らずに楽しみたいものだ。

プロもアマチュアも垣根なし!

そしてこちらも恒例の「武亀セッションワークショップ〜 一緒に歌ってみませんか?2026〜」は、一般の方々から募集して、選ばれた6組の歌い手が、武部聡志のピアノと亀田誠治のベースをバックに歌うプログラムだ。楽曲は平井堅の“POP STAR”や荒井由実の“やさしさに包まれたなら”など、世代を超えて愛されるポップソング。プロの演奏をバックに、多くの観客を目前にして歌う経験は、忘れられない想い出になるだろう。ライブを観るだけではないのが、日比谷音楽祭だ。

プロと観客の垣根を崩す意味では、初日にMusication Village - TAIKEN(日比谷図書文化館 小ホール)で開催された「GAKU-MCによるMaster of Ceremony入門ワークショップ〜コール&レスポンス編〜 with PES」も面白かった。ここでは黒人労働歌から生まれたという「コール&レスポンス」の歴史を振り返りながら、参加者が実際に「コール&レスポンス」にチャレンジする場面があった。日比谷図書文化館ではワークショップの他にも「日比谷ギタリスト会議」や「ファミコンを聴け!8bit ゲームミュージックの世界」など、音楽を様々な角度から紐解くトークプログラムが企画されていた。

在日ファンクが日比谷の熱をかっさらう

さて、風が心地よく太陽も多少容赦してくれている中、ONIWAステージ(日比谷公園 芝庭広場)に登場したのは初登場の7人組・在日ファンク。白いジャケットに身を包んだ彼らが登場すると、たちまち和製ファンクが鳴り響き、観客は待ってましたとばかりに歓声を上げる。

「亀田さんが出演アーティストを紹介する配信動画で、(在日ファンクのことを)宇宙に連れてってくれると言ってくれてたので、渾身の変な曲やりまーす!」

そう言って初期からの代表曲“環八ファンク”、そしてライブアンセム“チャーハン”を披露した後、「京都&レスポンスやりまーす!」と言って始まったのは“京都”。前日の「コール&レスポンス」ワークショップを受けていたので、浜野謙太(Vo)の手腕はやっぱりすごいなぁ、と普段と違った視点で楽しめた。

気づけば親に肩車されている子ども達もちらほら。よく見ると、子ども達の背中に黄色いステッカーが貼ってある。そう、今年初めて企画された「ファーストライブ」シールプレゼントだ。この日が初めてのライブとなった人であれば誰でももらえるシールで、入場無料のフェスで気軽にライブを楽しんで欲しい想いが込められている粋な取り組みだ。幼い頃に観たライブは、きっと今後の人生で忘れられない記憶の一部になるだろう。

東京を見渡せる絶景スポットにあるステージ

隠れた人気ステージが、KOTONOHAステージ(東京ミッドタウン日比谷 パークビューガーデン)だ。こちらは東京ミッドタウン日比谷の6Fにある展望スポット。皇居や日比谷公園を一望でき、夜は夜景がとてもきれいで、普段から人気の場所として知られている。

初日は強風で会場が変更となったが、2日目は実施できるということで、長崎県・上五島出身のシンガーソングライター・Aylltonの演奏を観に行った。『SUMMER SONIC 2024』にも出演歴があり、期待値抜群である。

エレベーターを降りてパークビューガーデンに到着すると、耳に飛び込んできたのは伸びやかな歌声。「初めましての人ー!」とAylltonが声をかけるとほとんどの人が手を上げており、この日が彼との初めての出会いの記念日となっていた。つい心地よくなり、芝生に寝転びながら歌を聴く。微睡みながら聴く昼下がりの生演奏。なんという贅沢だろうか。

伝統的な楽器から生まれる、聴いたことのない音楽

全体を通して、様々な楽器を使ったアーティストがラインナップされているのもこのフェスの特徴だ。ギターやバンド演奏は多くのフェスで楽しめるところだが、そのほかにも例えばウクレレを奏でるRIOやrena、尺八・琵琶・二十五絃箏などの和楽器を使う粋蓮、津軽三味線を弾きこなす駒田早代など、フェスには珍しい楽器奏者も沢山出演しているので、気になっている楽器の音色を聴く意味でも楽しめる。

中でも今年素晴らしかったのは、1998年生まれの箏奏者・LEOだ。LEOは箏奏者として初めてブルーノート東京や、『SUMMER SONIC』にも出演していたり、最新アルバム『microcosm』ではLAUSBUBや梅井美咲、U-zhaanなど多様な音楽家とコラボレーションするなど、この日比谷音楽祭にぴったりの演奏家。

この日は、HIDAMARIステージ(日比谷公園 健康広場)に出演。トラックメイカー / サウンドアーティストの森山瞬と、作曲家の冷水乃栄流らを迎えた5人での特別編成だ。ヴァイオリン、チェロ、箏、シンセサイザーに電子機材も交えた、見たことのないステージに多くの人が集まっていた。

公園のそよ風と夕日、初夏の緑の間にたゆたうサウンドは、オーガニックエレクトロとでも形容したくなるような清涼感で観客に降り注ぐ。安定した旋律の中で少しずつ熱量の上がっていくライブは、音楽を聴いているというよりも、音楽の中に連れて行ってくれているようで心地よかった。最初は「どの音が箏の音だろう」と興味を引かれていたが、そんなことはいつの間にか忘れ、ただ音楽の中にいるだけなのに整ったような心地になった、素晴らしい鑑賞体験だった。

歴史ある楽器が新しい音と出会って聴いたことがない音楽が生まれる。その組み合わせにより、これからどんどん新しい音楽が生まれていくのだろう、その息吹を一つ見せてもらった時間だった。

幾つになっても、どんな形でも、音楽と遊び続ける人生

さて、この日多くの人が楽しみにしていたのが、ONIWAステージ(日比谷公園 芝庭広場)での山内総一郎のライブだ。フジファブリックのメンバーとして2004年にメジャーデビューした彼は、2025年よりソロ活動を開始。初出演ということで注目度も高く、筆者の友人も何人か駆けつけていた。

この日は特別なアコースティック編成。しかし歌声とグルーヴは健在で、“スロウダンス”、“ソラネコ”で会場を一気に巻き込む。

ここでスペシャルゲストが。東京ディズニーリゾートの「ジャンボリミッキー!レッツ・ダンス!」で人気を博したダンサー・林祐衣だ。日比谷音楽祭のスペシャルスポンサーでもあるサントリーのオールフリーCMソング“GOOD FELLOWS”のMVに林が登場している関係で、この日限りのコラボレーションが実現。「今夜みんな集まって / 土産話し持ち寄って / 正念場乗り切ったなら / お疲れさん!と労って」の歌詞に、週末の日比谷公園に集まった日々を頑張るそれぞれへの労いと笑顔が弾ける。そのまま“BANBANZAI!!”で会場の盛り上がりはピークに達した。

そしてあっという間に最後の曲。ラストに選ばれたのは“人間だし”だった。昨年バンド・フジファブリックを活動休止してからソロとして駆け抜けてきた彼が、自分のペースで前に進むことを肯定するようなこの曲で最後を締め括った姿は、人生を通じて音楽を楽しむ一人の人間の生き様を見せてもらったようだった。

亀田はそれぞれのアーティストに声をかけた理由をはっきりと明言していたりはしないが、どこか「音楽を続けていくこと」や、アーティストの新しい挑戦を応援しているようにも感じられるのだ。

それをさらに感じたのが、「とまとくらぶ」の演奏だった。とまとくらぶは、旧知の仲である山田将司(THE BACK HORN)と村松拓(Nothing's Carved In Stone)がバンドの垣根を超えて組んだ結成3年目のアコースティックユニット。それぞれバンドとしてのキャリアを積み上げた中での肩肘張らない2人の演奏から、プロであっても、いやプロだからこそいつまでも挑戦を続ける自由さと生き様を見せてもらった気がした。筆者もこれからの人生、ライターとしてだけではなく、柔軟な形で音楽と関わっていきたいと思わされた。

この時、ステージ背後には亀田の姿が。何よりも亀田自身が、一つのバンド活動にとらわれず、裏方から表舞台まで自由自在に行き来して音楽と遊び続けている張本人なのだ。そんな彼が実行委員長を務めるフェスティバルには、音楽へのリスペクトと愛が各所に溢れている。ライブやワークショップ、さまざまなプログラムを通して、音楽の多様性と、誰にでも開かれている魅力を五感で感じられる2日間だった。そして何より、音楽は年齢や立場を問わず、人生とともに歩み続けられるものなのだと教えてもらった時間だった

文:柴田真希